日銀の金融政策決定会合から2025年を振り返る
2026/01/04|住宅ローン
政策委員9名の議論から2026年の金利シナリオを読み解く―――
なぜ今、日銀の金融政策を深く理解する必要があるのか
住宅ローンを検討する際、多くの人が「変動金利か固定金利か」「いまは借り時なのか」といった視点で情報を集めます。しかし、こうした判断を表面的な金利水準だけで行うことには限界があります。住宅ローン金利は、銀行が独自に決めているものではなく、日銀の金融政策を起点とした大きな流れの中で決まっているからです。
特に2024年以降、日本銀行(以下、日銀と省略)は長年続けてきた大規模金融緩和からの転換を進めています。この流れは、住宅ローン金利を考えるうえで無視できない環境変化です。金利が「上がるか・下がるか」という二択ではなく、どのような議論を経て、どの程度のスピードで動こうとしているのかを理解することが重要になっています。
金融政策決定会合とは何か(制度と仕組み)

日銀の金融政策は、「金融政策決定会合」で決定されます。この会合は原則として年8回開催され、政策金利や金融市場への資金供給の方針など、日本経済全体に影響する重要な判断が行われます。
多様なバックグラウンドが議論を生む
審議委員は、学者、金融機関出身者、企業経営経験者など、異なる経歴を持つ人物で構成されています。この多様性が利上げに対する考え方の違いを生み、結果として急激な政策変更を防ぐ安全装置として機能しています。
政策委員は9名
金融政策決定会合に参加するのは政策委員9名です。
※詳しくは以前のコラムをご覧ください
- 総裁:1名
- 副総裁:2名
- 審議委員:6名
全員が1票を持つ合議制であり、特定の人物の意向だけで政策が決まる仕組みではありません。
政策委員のスタンス別整理(政策委員の発言から読む)
◆ 利上げ推奨寄りの立場
田村直樹 審議委員

利上げ推奨寄りの立場を理解するうえで重要なのが、田村直樹審議委員の発言です。
2025年2月の講演において、田村審議委員は、日本経済について、
賃金と物価がともに緩やかに上昇する局面に入りつつあり、デフレ的な状況からの脱却が進んでいる
との認識を示しています。そのうえで金融政策については、
経済・物価の改善が確認されるもとでは、極めて緩和的な金融環境を維持し続ける必要性は低下していく
と述べ、金融政策の正常化を視野に入れた考え方を示しています。この立場は、住宅ローン金利との関係でいえば、変動金利が中長期的に上昇しやすい環境に入る可能性を示唆しています。
◆ 慎重派の立場
野口旭 審議委員

慎重派の代表的な存在が、野口旭審議委員です。
2025年11月の講演で野口審議委員は、
現在の物価上昇には、輸入物価やエネルギー価格の影響が大きく、需要の強さや賃金上昇によるものと直ちに判断することは難しい
と述べています。さらに、
賃金と物価の好循環がどこまで持続するかについては、引き続き慎重な見極めが必要である
とも指摘しています。
この発言からは、利上げそのものを否定する姿勢ではなく、利上げが家計、とりわけ住宅ローン返済に与える影響を強く意識していることが読み取れます。
◆ 中立・合意形成を担う立場(データ重視)
氷見野良三 副総裁

金融政策決定会合において、「中立派」あるいは「合意形成役」と位置づけられるのが、氷見野良三副総裁です。
氷見野副総裁は、2025年に行われた複数の講演や挨拶の中で、一貫して
金融政策は、あらかじめ決めた道筋を機械的に進むものではなく、経済・物価情勢を一つ一つ確認しながら判断していく
という趣旨の発言をしています。
この姿勢は、利上げに前向きな審議委員と、慎重な審議委員のいずれかに与するものではありません。むしろ、両者の意見を踏まえながら、政策委員会全体としての合意点を見いだす役割を担っているといえます。
氷見野副総裁の発言から読み取れるのは、
- 利上げを否定しているわけではない
- しかし、利上げありきでもない
- データと実体経済の反応を最優先する
という、極めて実務的かつ中立的なスタンスです。
住宅ローン金利との関係で考えると、この立場は、
- 金利が急激に上昇する局面ではない
- 一方で、超低金利が永続する前提にも立てない
というメッセージにつながります。
生活者にとっては、「過度に不安になる必要はないが、将来の金利変動を前提に備える必要がある」ことを示唆する立場だといえるでしょう。
副総裁の発言に見る政策運営の実務的側面
内田眞一 副総裁

金融政策決定会合の運営を、より実務的な視点から理解するうえで重要なのが、内田眞一副総裁の発言です。
内田副総裁は、日本銀行の金融市場オペレーションや政策実務に長く携わってきた人物であり、その発言には「政策をどう実行し、市場にどう伝えるか」という実務的な視点が色濃く表れています。
2025年の講演において、内田副総裁は、
金融政策の調整は、その効果が経済や金融市場にどのように波及するかを十分に見極めながら進める必要がある
という趣旨の発言をしています。これは、利上げそのものの是非を論じるというよりも、
- 金融政策が市場に与える影響
- 金利変動が企業や家計に与える影響
- 想定外の副作用をどう抑えるか
といった実務面での配慮を重視した姿勢だといえます。
2025年12月18〜19日 金融政策決定会合との関係
内田副総裁のこうした発言は、2025年12月18〜19日に開催された金融政策決定会合の性格とも整合します。この会合は、新たな政策変更を打ち出す場というよりも、
- これまでの利上げの影響を点検する
- 市場や家計への波及を確認する
- 2026年に向けた判断材料を整理する
という「検証と整理の会合」として位置づけられました。住宅ローン金利の観点では、この姿勢は、
- 金利が一気に跳ね上がる局面ではない
- ただし、緩やかな水準修正が続く可能性は否定できない
という現実的な見通しにつながります。
内田副総裁の実務的な視点は、金融政策決定会合が「理論だけでなく、生活への影響を強く意識して運営されている」ことを示しており、住宅ローン利用者にとっても重要な示唆を与えるものです。
2025年12月18〜19日 金融政策決定会合の意味
2025年12月18〜19日に開催された金融政策決定会合は、こうした発言の流れを踏まえた「確認フェーズ」の象徴的な会合でした。この会合では、これまでの利上げが、
- 賃金
- 消費
- 住宅投資
にどのような影響を与えているかが重点的に確認されました。新たな方向転換を示す場というよりも、2026年に向けた判断材料を整理する会合だったと位置づけられます。
金融政策は住宅ローン金利にどう伝わるのか
変動金利への影響
政策金利は短期金利を通じて、変動金利型住宅ローンに影響します。ただし、利上げが即座に返済額に反映されるわけではなく、多くの金融機関では激変緩和措置が取られています。
重要なのは、「金利は必ず急上昇する」という前提で不安になることではなく、上昇余地があることを前提に返済余力を確保できているかです。
固定金利・【フラット35】への影響
固定金利型住宅ローンや【フラット35】は、長期金利の影響を受けます。金融政策の正常化が進めば、長期金利も緩やかに水準訂正が進む可能性があります。
ただし、政策委員会の慎重な姿勢から見ても、急激な固定金利上昇を想定する局面ではありませんが、【フラット35】には別の問題があり、【フラット35】の金利は1月以降急激に上がる可能性があるため、借り換えを検討している方は急いだほうが良いでしょう。
2026年に向けた金利シナリオとFPの視点
2026年に向けては、
- 緩やかな利上げ継続
- 利上げ一時停止
- 想定外の景気減速
といった複数のシナリオが考えられます。どのシナリオでも共通して言えるのは、金利を当てにいくことより、金利変動(上昇)に耐えられる住宅ローン設計が重要だという点です。
まとめ
日銀の金融政策決定会合は、9名の政策委員による多様な意見を調整しながら進められています。田村審議委員の正常化志向、野口審議委員の慎重な見極め、高田審議委員の影響確認、そして副総裁による中立的な合意形成。
これらの議論の積み重ねが、住宅ローン金利の「緩やかな変化」を生み出しています。
2026年は、「金利が上がるか下がるか」ではなく、金利が動く前提でどう備えるかが問われる年になります。金融政策の裏側を理解することが、住宅ローンという長期の意思決定を支える確かな判断材料になるでしょう。
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