「半年に一度の利上げ」とは限らない?日銀・高田委員の発言から住宅ローン金利の次を読む
2026/09/05|住宅ローン
2026年9月17日・18日に、日本銀行の金融政策決定会合が開催されます。現在の政策金利は1.0%。7月31日の金融政策決定会合では1.0%に据え置かれましたが、高田創審議委員は政策金利を1.25%程度へ引き上げる議案を提出しています。結果は反対多数で否決されました。ところが、その高田委員が9月2日の札幌市金融経済懇談会で、今後の金融政策について非常に興味深い考えを示しました。
ポイントは、これまでのような「0.25ポイントずつ」「半年程度の間隔」といった利上げペースを前提に考える局面ではなくなっているという認識です。
もちろん、これは「9月に必ず利上げする」「次は0.5ポイント引き上げる」という意味ではありません。しかし、住宅ローンを利用している方、これから住宅ローンを借りる方にとっては、見逃せない変化です。今回は、高田委員の講演と記者会見から、日銀の金融政策と住宅ローン金利の「次」を考えます。
7月会合で高田委員は1.25%への利上げを提案

まず現在地を確認しましょう。日銀は7月31日の金融政策決定会合で、無担保コールレート・オーバーナイト物を1.0%程度で推移するよう促す方針を維持しました。つまり、政策金利は1.0%のままです。
ただし全員が据え置きを支持したわけではありません。高田委員は、「1.0% → 1.25%」への利上げを提案しました。日銀によれば、その理由は海外発の需要ショックによる物価上振れリスクや、海外の金融環境の転換に対して機動的な対応が必要な新しい局面に入ったと判断したためです。
ここまでは、9月1日に公開した「【フラット35】2026年9月の金利は3.46%」でも触れた、日銀が追加利上げを視野に入れている流れの延長線上にあります。しかし、9月2日の高田委員の発言では、さらに一歩踏み込んだ考えが示されました。
「半年に一度」という考え方そのものを変える?
高田委員は9月2日の記者会見で、2024年、2025年は結果として年2回程度のペースで金融政策を調整してきたと振り返っています。ところが2026年については、
「局面が変わった」「新たなレジームになった」
との認識を示しました。その背景として挙げたのが、世界的な金融政策の変化、AIを中心とした世界的な需要拡大、中東情勢などによる物価上昇です。そのうえで、従来の半年に一度、年2回という状況ではなく、環境変化に応じた機動的な対応が必要との考えを示しています。
さらに重要なのが、利上げ幅です。これまでの日銀の利上げを見ると、「次も0.25ポイントではないか」と考えたくなります。しかし高田委員は、0.25ポイントだけではなく「幅広い選択肢」の中から、国内外の環境変化に応じて対応する必要があるとの問題意識を示しました。
これは住宅ローンを考えるうえでも重要で、「日銀が利上げしても0.25ポイントずつだろう」「一度利上げしたら、次まで半年程度は空くだろう」という前提が、今後も続く保証はありません。
では次に0.5ポイント利上げするのか?
ここは誤解しないように整理する必要があります。高田委員は、次の利上げが0.5ポイントになるとは言っていません。記者会見でも、0.5ポイントなのか0.75ポイントなのか、現時点で具体的に示せるものではないと明確に説明しています。7月に1.0%から1.25%への利上げを提案した際には、0.25ポイント程度の幅が適切だと判断していました。
重要なのは「次は0.5ポイント」という話ではなく、0.25ポイントという利上げ幅や半年程度という間隔を、あらかじめ決められたルールのように考えるべきではないという点です。
高田委員は、3か月ごとの利上げや連続利上げについても、あらかじめ間隔を決めるのではなく、その時々の状況で判断するとの考えを示しています。したがって、9月17・18日の金融政策決定会合についても、「7月に据え置いたから9月も据え置くだろう」「次の利上げまではまだ時間があるだろう」と単純には考えられません。
「中立金利まで上げれば終わり」でもない
もう一つ注目したいのが、中立金利に関する発言です。中立金利とは、景気を刺激も抑制もしない金利水準を指します。住宅ローン金利の将来を考える際、「日銀の政策金利は最終的に何%まで上がるのか」という疑問がよく出ます。
その目安として中立金利が取り上げられますが、高田委員は、中立金利そのものを特定する難しさを指摘しています。特に日本は海外経済の影響を受けやすく、過去30年間のデフレ期のデータから算出した中立金利を、そのまま現在の金融政策の目標地点として扱うことには慎重です。
一方で、現在の実質金利はまだ相当に低く、一定程度、中立金利に近づけていく必要があるとの認識も示しています。つまり、「政策金利が1%になったから、利上げはそろそろ終わる」と判断できる状況ではありません。
参考:「日銀3月金融政策決定会合から読み解く住宅ローンの現在地と今後の姿」
長期金利は3%に到達
さらに今回の記者会見では、住宅ローンの固定金利に関係する重要な話も出ています。記者から「昨日、長期金利が上昇して3%に到達した」との質問が出ました。
高田委員は特定の長期金利水準への評価を避けながらも、2026年は世界的な金融政策、財政、AI関連投資、中東情勢と物価上昇などを背景として、長期金利が世界的に上がりやすい環境にあり、日本もその一環との認識を示しています。ここは、住宅ローン利用者にとって非常に重要です。
変動金利は日銀の政策金利の影響を強く受けます。一方、固定金利は長期金利など市場金利の影響を強く受けます。つまり現在は、変動金利には追加利上げのリスクがあり、固定金利にはすでに長期金利上昇の影響が出ているという状況です。
実際、2026年9月の【フラット35】金利は、融資率9割以下・返済期間21~35年で3.46%となりました。8月の3.29%から0.17ポイント上昇し、今年5月の2.71%と比べると、わずか4か月で0.75ポイント上昇しています。
詳しくは、9月1日に公開した「【フラット35】2026年9月の金利は3.46%|2ヶ月連続上昇、今後の住宅ローン金利は?」で解説しています。
変動金利の人が見るべきなのは「次の1回」だけではない
9月の金融政策決定会合で利上げするかどうかは、現時点ではわかりません。しかし、住宅ローン利用者にとって本当に重要なのは、9月に1.25%になるか、1.0%に据え置かれるかを当てることではありません。高田委員の発言から読み取るべきなのは、金融政策を取り巻く環境が変化しており、従来の利上げペースをそのまま将来に当てはめるべきではない、という点です。
たとえば4,000万円を35年返済で借りている場合、住宅ローンの適用金利が1ポイント上昇すれば、家計への影響は決して小さくありません。しかも変動金利型住宅ローンでは、金融機関によって金利見直し時期、返済額見直し時期、5年ルールや125%ルールの有無などが異なります。
参考:「変動金利は金利が上がる時代に突入:これからどうする!?住宅ローン戦略」
重要なのは、次の利上げはいつか」ではなく、「政策金利がさらに上昇しても返済を続けられる家計になっているか」を確認することです。
9月17・18日の金融政策決定会合に注目
次回の日銀金融政策決定会合は2026年9月17日・18日です。日銀の公表予定でも確認できます。7月会合では、高田委員が1.25%への利上げを提案しました。そして9月2日には、従来の「0.25ポイント」「半年程度」といった利上げペースにとらわれず、環境変化に応じて機動的に対応する必要性を改めて示しました。これは高田委員個人の見解であり、日銀政策委員会全体の決定を意味するものではありません。
それでも、政策委員の一人がここまで明確に利上げペースについて問題提起している以上、9月会合は住宅ローン利用者にとって重要な会合になります。住宅ローンをこれから借りる方も、すでに変動金利で返済している方も、「今の金利が何%か」だけではなく、「さらに金利が上昇した場合に家計がどうなるか」を確認しておきたい局面です。
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