ビッグモーターに学ぶ業界の闇
2023/07/31|住宅購入
連日報道されているビッグモーターによる損害保険金不正請求問題ですが、現在ではそもそも個人が所有する車両ではない契約も多数存在するなど虚偽契約の問題や、街路樹を故意に枯らせたり、行き過ぎた人事異動など、様々な問題が取り上げられています。
また、これらの報道が出るたびに関係者の証言として出てくるのが「業界では当たり前」とか「よくある話」「業界あるある」というコメントです。
私もこれまでにコンピューター関連や運送業、小売業、製造業、建設業など複数の業種業界に身を置いていた経験があり、そのたびに「裏側はこうなんだなぁ…」と思うこともありましたが、同業者に話を聞けば「ウチも同じだよ」という話をよく聞くため、どの業種業界にもよく言えば「習慣」、悪く言えば「闇」があることを知りました。
住宅業界における闇
闇というほどではないかもしれませんし、すべての住宅会社や工務店に当てはまるものではありませんが、売るものの価格に対して営業担当者の知識が低いように感じます。
というのも、本来は金融商品などの販売は専門の資格が必要です。いくら少額であれ、保険販売(保険募集)は保険業法により試験に合格した募集人に限られています。投資信託や株式などのリスク商品は証券外務員や投資助言・代理業などの資格が必要です。しかし購入価格が数千万円もする一部の住宅の販売には資格が不要なのです。
建売住宅などの販売では不動産売買契約を結ぶため、契約には宅地建物取引士の資格が必要ですが、新築住宅における工事請負契約には宅地建物取引士の資格は不要です。つまり何の知識も経験も無い従業員であっても、工事請負契約の契約内容を説明してお客様から署名・押印をいただくことが可能です。
しかも、そこに住宅ローンの斡旋をする際にも資格が不要です。銀行が住宅ローンを扱うのであれば、貸金業法で定められているため、営業所には必ず貸金業務取扱主任者が常駐しています。しかし、銀行に代わって住宅ローンの説明や選択のためのアドバイスや申込書の記入などを補助する住宅営業担当者は無資格で構わないのです。
被害者が被害者と気づくのに時間がかかる
購入した住宅に問題があれば、お客様は「知識の無い営業担当者から住宅を購入したこと」を即座に後悔するでしょうし、被害に遭ったという思いにもなります。ですから、いろいろなところに「欠陥住宅」だとか「営業担当者に騙された」というような話がインターネットやSNSで書かれていますし、テレビなどでもたびたび取り上げられています。
しかし、住宅ローンに関しては被害に遭ったと気づくのに時間がかかりますし、もしかすると被害に遭ったと最後まで気づかないかもしれません。
何の話かと言えば金利の低い変動金利の住宅ローンを勧められた場合の話です。
返済完了までこのままの超低金利が続けば何の問題もありません。しかし、今後に金利が急上昇して返済が滞るようになれば話は別です。
「なんでこんなに危険な変動金利なんかを勧めたんだ?」
と言いたくなるのが普通ですし、そこで初めて当時を振り返って調べ始めるでしょう。
- 変動金利とはどういうものなのか?
- 住宅を購入した時点で金利上昇が予見できなかったのか?
- なぜ営業担当者は変動金利を勧めたのか?
- 営業担当者は住宅ローンについて知識を持っていたのか?
しかし、そこで気づいても遅いのです。
住宅会社・工務店が取っておくべき対策
現在のところ、ビッグモーターの問題で、エンドユーザーが被害に遭った話は出てきていません。でもこれだけの社会問題に発展し「ビッグモーターけしからん」と顧客離れが起きています。
もし住宅ローンの金利が急上昇するようなことがあり、変動金利ローンを借りている方に支払いが滞るような方が多数発生したら、それでも住宅会社は
「いやいや住宅ローンの契約はお客様が銀行としており自己責任ですから」
と言えるのでしょうか?世の中で起こるSNSなどによる「住宅会社けしからん」といった「住宅会社の袋叩き」に耐えられるのでしょうか?
住宅会社はもっと正しく住宅ローンのコンサルティングをしたほうが良いと思います。
お客様の自己防衛
しかし、すべてが住宅会社任せもいけません。きちんと自己防衛しておきましょう。
必要なことは
- 住宅ローンについて正しい知識を得る
- 借りる金額と返済期間をよく考える(できればCF表を作成する)
- インターネットやSNSの情報だけを頼りにしない
- 自分に情報を提供する人の立ち位置(ポジション)から情報の正確性を検証する
などです。
エフアンドエス・エキスパートでは住宅を購入する方を支援しています。
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【注意】
今回のコラムは事例としてわかりやすい変動金利について書きましたが、変動金利の住宅ローンが絶対にダメではありません。しかし金利上昇局面においては注意すべきことがたくさんあるため、言ってみれば「上級者向け」のようなものだと思ってください。
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