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大和ハウスが新築戸建て23道県から撤退 問われるのは「売る場所」より「建てた後」ではないか

大和ハウスが新築戸建て23道県から撤退 問われるのは「売る場所」より「建てた後」ではないか

2026年9月4日、大和ハウス工業が国内の新築戸建住宅事業を大幅に再編すると発表しました。

需要が堅調な都市圏へ営業・設計・施工などの経営資源を集中し、報道によれば北海道から鹿児島県まで23道県で新築戸建住宅の販売から撤退します。組織・事業体制の変更は2027年4月1日付です。背景にあるのは人口減少、地方から都市部への人口流出、建築資材や人件費の上昇、新設住宅着工戸数の長期的な減少などです。大和ハウスは、エリアごとの着工数、価格競争力、将来の市場規模などを分析し、都市圏を中心とした14支社・支店へ経営資源を重点配置するとしています。(大和ハウス工業)

企業経営だけを考えれば、不採算地域から撤退し、需要のある市場へ経営資源を集中するのは合理的な判断です。しかし、住宅会社の場合は少し事情が違います。住宅は「売ったら終わり」の商品ではないからです。

今回のニュースで本当に注目すべきなのは、「大和ハウスがどこで新築を売るのをやめるのか」だけではありません。すでに大和ハウスで住宅を建て、これから30年、40年、50年と暮らしていくオーナーを、撤退後の地域で誰がどのように支えるのか…私は、むしろこちらの方が重要な論点だと考えます。

大和ハウスは「アフターサービスから撤退する」とは言っていない

ここは最初に明確にしておかなければなりません。今回の発表は、新築戸建住宅事業からの撤退であり、既存住宅のアフターサービスから撤退するという発表ではありません。大和ハウスは公式発表で、既存オーナーへのアフターサービスは「大和ハウスパートナーズ株式会社」が引き続き全国で提供すると明記しています。さらに、現在のアフターサービス部門、リフォーム、不動産仲介、買取販売などを再編し、全国47都道府県の拠点で住宅の維持管理から住み替えまで対応する体制を構築するとしています。(大和ハウス工業)

したがって、「23道県から撤退するから、そこに住むオーナーは今後メンテナンスを受けられない」という理解は正しくありません。むしろ大和ハウス自身も、新築市場が縮小する一方で既存住宅市場が拡大すると考え、新築事業を縮小する反面、住宅ストック事業を強化する戦略を打ち出しています。

それでも既存オーナーが気になる理由

では、全国対応を続けるのであれば何も問題はないのでしょうか。私は、そう簡単には考えられないと思います。住宅会社のアフターサービスは、「電話をすれば誰かが来てくれる」だけで完結するものではありません。住宅は築年数が経過すれば、外壁、防水、屋根、給排水設備、サッシ、建具、構造部分など、さまざまなメンテナンスが必要になります。特に大手ハウスメーカーの住宅には、メーカー独自の部材、納まり、施工方法などが使われている場合があります。

もちろん、地域の工務店が修理できない住宅ばかりという意味ではありません。しかし、他社へ簡単にメンテナンス先を変更できるとは限らない住宅が存在するのも事実であり、さらに重要なのが「保証」です。

「60年保証」は、会社との長い関係を前提としている

大和ハウスは現在、商品によって60年の長期保証を大きく訴求しています。たとえば「xevo BeWood」では、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、初期保証30年、その後30年目・45年目に必要な有料メンテナンス工事を実施することで保証を延長し、60年保証とする仕組みを案内しています。

ここで重要なのは、「60年間、何もしなくても無条件で保証される」という意味ではないという点です。大和ハウスの保証・点検プログラムでは、保証満了時に点検・診断に基づく有料メンテナンス工事を実施した場合に保証を延長する仕組みが示されています。(大和ハウス工業)

また、大和ハウスが関与しない増改築や補修に起因する不具合などについては、保証の適用除外となる場合があることも明記されています。つまり長期保証という商品価値は、建物そのものだけではなく、建築会社が長期間にわたって点検・修繕を提供できる体制とセットになっており、ここに今回のニュースを考える重要な視点があります。

「新築営業から撤退」と「住宅から撤退」は同じではない

企業側から見れば、新築販売を行う営業・設計・施工部門と、既存住宅を維持するアフターサービス部門を分けて考えるのは合理的です。しかし住宅所有者から見ると、その境界はそれほど明確ではありません。

家を建てたときには、営業担当者がいて、設計担当者がいて、工事担当者がいて、近くに支店がある。困ったときには、その会社へ相談すればよい。そうした安心感も含めて、大手ハウスメーカーを選んだ方は少なくないでしょう。

その地域で新築営業をやめ、営業・設計・施工の拠点が集約された後でも、

このあたりは、今回の発表だけではまだわかりません。

大和ハウスは全国47都道府県でサービスを提供するとしていますので、今後はその約束を実際のサービス品質としてどのように維持するのかが重要になります。

住宅会社には「売った後」の責任がある

ここは大和ハウスだけの問題ではありません。人口減少が続く日本では、今後、住宅会社の統廃合、営業エリアの縮小、事業撤退は増えていく可能性があります。地方ほど住宅着工戸数が減れば、「その地域で新築住宅を販売し続けても採算が取れない」という判断をする会社も増えるでしょう。企業である以上、事業を継続するために採算性を考えるのは当然です。

しかし住宅は、数年で買い替える商品ではありません。30年、50年、場合によっては世代を超えて使われます。だから住宅会社には、「どこで売るか」を決める自由と同時に、「売った住宅をどう支えるか」という責任があります。特に長期保証や長期アフターサービスを販売時の大きな特長としてきた企業ほど、その責任は重いと私は考えます。

今回の再編は「撤退」だけを見てはいけない

今回の大和ハウスの発表を、「地方の住宅市場が厳しいから23道県から撤退する」というニュースだけで見ると、本質を見落とします。大和ハウスは新築戸建事業を都市圏へ集中する一方、アフターサービス、リフォーム、不動産仲介、買取販売などを統合し、住宅ストック事業を全国で強化するようです。

これは、「新築住宅を売り続ける会社」から「建てた住宅を長期間管理する会社」へ、事業の比重を移そうとしているとも読めます。その戦略がうまく機能すれば、今回の再編は既存オーナーにとって必ずしも悪いニュースではありません。むしろアフターサービス部門が強化される可能性もあります。

一方で、拠点集約によって地域ごとのサービス密度が低下すれば、長期保証を信頼して住宅を購入したオーナーの期待を裏切る結果にもなり得ます。評価すべきなのは、2027年4月の組織変更そのものではなく、その後5年、10年、20年と、撤退した地域のオーナーにも本当に同じサービスを提供し続けられるかです。

これから住宅会社を選ぶ人にも重要なニュース

今回のニュースには、これから住宅を購入する方への教訓もあります。住宅会社を選ぶとき、「耐震等級はいくつか」「断熱性能はどうか」「設備は何が付いているか」「価格はいくらか」といった建物そのものを比較する方は多いでしょう。しかし、住宅会社選びにはもう一つ重要な視点があります。

「30年後、この家を誰が直してくれるのか」

その視点で確認しておきたいのは、

  • 保証期間だけではなく、保証を延長する条件
  • 定期点検を誰が行うのか
  • 有料メンテナンスの内容と費用
  • 他社による修繕を行った場合の保証への影響
  • 建築会社が地域から撤退した場合の対応
  • 部材が廃番になった場合の修理方法
  • 住宅会社そのものが事業撤退した場合の対応

であり、長期保証の「○○年」という数字だけを見ても、その住宅の安心度は判断できません。その保証を実際に何十年間も履行できる仕組みがあるのか。そこまで確認して、初めて長期保証の価値を判断できます。

まとめ

大和ハウスが新築戸建住宅事業を23道県から撤退するというニュースは、住宅業界の市場縮小を象徴する出来事です。人口減少や資材・人件費の高騰を考えれば、都市圏へ経営資源を集中する企業判断には合理性があります。また、大和ハウスは既存オーナーへのアフターサービスについて、新会社「大和ハウスパートナーズ」が全国で継続し、47都道府県で住宅ストック事業を展開すると明確に表明しています。その点を無視して、「撤退したから既存顧客は困る」と結論づけるのは適切ではありません。

しかし同時に、大和ハウスは長期保証や長期アフターサービスを住宅商品の大きな価値として提供してきました。だからこそ今後問われるのは、「全国で対応します」という発表ではなく、そのサービスを何十年間、どの地域でも実際に維持できるかです。

住宅会社にとって新築住宅の契約はゴールではありません。購入者にとっては、そこから数十年間の生活が始まります。今回のニュースは、私たちが住宅会社を選ぶ際にも、「どんな家を建てる会社なのか」だけではなく、「建てた家を最後まで支えられる会社なのか」を見る必要があることを改めて示しているのではないでしょうか。

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