電気・ガス代、実は3ヶ月間「値引き」されていた!?
2026/10/02|家計管理
~申請不要で自動的に値引き、9月使用分で国の支援が終了~
この夏、電気代とガス代が国の支援によって値引きされていたのをご存じでしょうか。「そんな補助を申請した覚えはない」と思った方もいるかもしれませんが、今回の支援は、国が電気・都市ガスの小売事業者などを通じて料金を値引きする仕組みなので、私たちは特別な手続きをしなくても自動的に支援を受けていました。対象となったのは2026年7月、8月、9月使用分で、政府は標準的な家庭について、電気・ガスを合わせて3ヶ月で5,000円程度の負担軽減効果を見込んでいました。
そして、この支援は9月使用分で終了しています。つまり、この夏は知らない間に電気・ガス料金が国の支援によって安くなり、その支援も知らない間に終了した方が少なくないでしょう。今回は「補助終了で家計が大変」という話ではありません。普段何気なく支払っている電気・ガス料金が、実は政策によってどの程度変わっていたのか、そして支援が終了すると請求書の見え方がどう変わるのかを確認してみます。
3ヶ月間、どのくらい値引きされていた?
2026年夏の電気・ガス料金支援は、冷房などによってエネルギー使用量が増える夏場の負担を軽減する目的で実施されました。家庭などで利用する低圧電気は、7月使用分が1kWhあたり3.5円、8月が4.5円、9月が3.5円の値引きです。都市ガスは7月が1㎥あたり14円、8月が18円、9月が14円となっており、最も暑くなる8月の支援単価が大きく設定されています。政府はこの支援によって、標準的な家庭では電気・ガスを合わせて3ヶ月で5,000円程度の負担軽減になると説明していました。

実際の値引き額は使用量によって変わります。たとえば9月に電気を300kWh使用した家庭なら、300kWh×3.5円で1,050円が値引きされます。都市ガスを30㎥使用していれば30㎥×14円で420円となり、両方を合わせれば1,470円です。電気料金やガス料金の請求額だけを見ていた方にとっては、その中に1,470円の政策による値引きが含まれていたとは気づきにくかったかもしれません。
申請していないのに、なぜ値引きされていた?

今回の支援が分かりにくい理由の1つは、一般家庭が国から直接お金を受け取る制度ではない点にあります。国が値引き原資を電気・都市ガスの小売事業者などへ支援し、事業者が国の定めた単価に応じて利用者の料金を値引きする仕組みです。2026年度の予備費では、この電気・ガス料金負担軽減支援事業に5,135億円が計上されています。
児童手当のように銀行口座へお金が振り込まれる制度であれば、「今月は国からいくら支援された」と認識できます。今回のように請求額から最初から差し引かれる制度では、支援を受けている実感はかなり薄くなります。毎月の請求書を見て「今月の電気代はこれくらいだった」と確認していても、その金額が政策によって一時的に低くなっていたとは意識しにくいでしょう。
ここが今回の支援で少し面白いところです。私たちが毎月支払っている電気・ガス料金は、使用量やエネルギー価格だけで決まっているのではなく、自分では何も手続きをしていなくても、国の政策によって実際の支払額が変わる場合があります。
なぜ夏の3ヶ月だけ支援した?
今回の支援は、年間を通じて電気・ガス料金を安くする制度ではなく、夏場の負担軽減を目的とした期間限定の政策です。政府は、暑くなる夏への対応として、エアコンを適切に利用できる環境を整え、国民の命と暮らしを守る観点から7~9月使用分を支援すると説明していました。2026年は中東情勢によるエネルギー価格への影響もあり、夏場の電気・ガス料金への対応が実施されています。
実際、経済産業省は6月30日の大臣会見で、中東情勢の影響によって7月の電気料金は標準的な家庭で300円程度上昇すると見込まれる一方、政府支援には1,300円程度の引下げ効果があり、差し引きでは1,000円程度の負担軽減になるとの試算を示していました。つまり、今回の支援は単に「夏だから少し安くしておこう」という政策ではなく、電力使用量が増える時期とエネルギー価格上昇が重なる中で、一時的に家計負担を抑える役割を持っていたと考えられます。
「9月で終了」なのに10月の請求書にも値引きがある?
支援終了時期については、「9月使用分」と「9月請求分」を混同しないよう注意が必要です。今回の対象は9月に請求された料金までではなく、9月に使用した電気・ガスまでです。経済産業省の資料では、7月使用分は8月検針分、8月使用分は9月検針分、9月使用分は10月検針分として値引きされる仕組みが示されています。
そのため、支援自体は9月使用分で終了していても、10月に届く請求書には国の値引きが入っている家庭があります。一方、現在公表されている今回の支援に10月使用分は含まれていないため、10月に使用した電気・ガスが請求される11月頃から、支援がなくなった料金を見る家庭が多くなると考えられます。実際の検針日や請求時期は契約している電力会社・ガス会社によって異なりますが、「9月で支援終了=10月の請求から値引きが消える」とは限らない点は知っておきたいところです。
実は2025年の夏も値引きされていた
こうした電気・ガス料金への支援は、2026年夏に突然始まったものではありません。2025年にも7~9月使用分を対象として同様の支援が実施され、低圧電気では7月と9月が1kWhあたり2.0円、8月が2.4円、都市ガスでは7月と9月が1㎥あたり8円、8月が10円値引きされていました。2026年は低圧電気が3.5円・4.5円・3.5円、都市ガスが14円・18円・14円なので、今年の夏は前年より支援単価そのものも大きくなっています。
2年続けて夏の電気・ガス料金が政策によって値引きされていたにもかかわらず、「昨年も今年も補助を受けた」という認識がない方もいるのではないでしょうか。自分で申請する必要がなく、自動的に請求額へ反映される仕組みだからこそ、政策の存在そのものに気づきにくい面があります。
知らないところで、私たちが支払う金額は変わっている

今回の支援による負担軽減は、標準的な家庭で3ヶ月5,000円程度ですが、今回注目したいのは金額の大きさではなく、私たちが知らないところでも、政策によって日常生活の支払額が変わっているという点です。
電気・ガス料金だけではありません。ガソリン価格、税金、社会保険料、住宅ローン金利、各種給付や補助制度など、私たちが毎月支払ったり受け取ったりするお金の背景には、さまざまな制度や政策があります。制度改正のニュースをすべて追いかける必要はありませんが、「なぜ今月は高くなったのか」「なぜ昨年と金額が違うのか」と疑問を持ったとき、その背景を調べてみると、単純な値上げ・値下げではないケースも見つかります。
2026年7~9月の3ヶ月間、電気・ガス料金には国の支援による値引きが入っていました。そして、その支援は9月使用分で終了しました。11月頃に届く電気・ガス料金を見て「少し高くなったかな」と感じたら、使用量やエネルギー価格だけではなく、「そういえば、夏に入っていた国の値引きが終わったんだ」と思い出していただければと思います。
普段何気なく支払っているお金も、その金額がどのように決まっているのかを少し知るだけで、ニュースや制度改正の見え方はずいぶん変わります。
関連記事:過去の電気料金に関するコラム【再エネ賦課金が2023年5月から引き下げ】
出典・確認日
確認日:2026年10月2日
- 経済産業省「2026年7月、8月及び9月使用分の電気・ガス料金支援の実施に伴い、電気・都市ガス料金の値引きを行うことができる特例認可・承認を行いました」2026年6月12日。支援期間、支援単価、使用月と検針月の関係を確認
- 経済産業省「赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要」2026年5月26日。標準的な家庭で3ヶ月5,000円程度の負担引下げ効果との説明を確認
- 経済産業省「電気・ガス料金負担軽減支援事業」。2026年度予備費5,135億円および事業スキームを確認
- 資源エネルギー庁「2025年夏の電気・ガス料金支援」。2025年7~9月使用分の支援単価を確認
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