地震ハ…予知デキマセ~ン
2023/06/18|自然災害
東京大学名誉教授であり地震学者のロバート・ジェームズ・ゲラー氏(以下、親しみを込めてゲラーさんと呼びます)は、度々テレビなどにも登場し声高に話します。
「地震ハ…予知デキマセ~ン」
ゲラーさんは地球の内部構造の解析が専門で、20年以上前から「地震は予知できない」という論文を発表しています。日本政府の地震政策に対しても「現実的ではなく科学的でもない」と批判的な発言をしていて、それはいまでも変わりません。
先日も私がTwitterで次のようにリツイートしたところゲラーさんからコメントをいただきました(とても嬉しい)↓
はい,そうです。厳密に言いたいならば「現時点に正確な地震予知はできない」と言いますが、まぁ分かりやすく言いますと「地震予知はできない」と言いますが。
— Robert Geller; ロバート・ゲラー (@rjgeller) May 15, 2023
因みに、「俺が予知できるぞ」と言うイカサマ師がいますが、本来彼らが手法を公開してこれが客観的第三者の検証を受けるべきです。
厳密には「いつどこでどの程度の地震が起こるかはわからない」という、いつもゲラーさんが仰っているとおりの内容です。
「近いうち」の意味するところ
政府の地震調査委員会は2022年1月13日に、南海トラフで今後40年以内にマグニチュード8~9級の地震が発生する確率を「90%程度」と発表しました。周期的に発生する地震は、地震が起きていない期間が長くなるほど発生確率が上がる(パチンコで暫く出ていない台はそろそろ大当たりするみたいなものか?)ということで、しばらく起きていない南海トラフ地震の発生確率を前年発表した「80~90%」から引き上げました。ちなみに、10年以内に発生する確率は「30%程度」、30年以内では「70~80%」の発生確率としています。
南海トラフ地震も首都直下型地震も近いうちに起きることは間違いないとゲラーさんも認めています。
ただし、「近いうち」とはどれくらいの期間を指すのかは、人の感覚や指している事柄により異なります。たとえば「近いうちにまた会いましょう」と言うと、人によっては「1~2ヶ月のうち」と思うかもしれませんし、人によっては「2~3年のうち」と思うかもしれません。また「近いうちに車が空を飛ぶ時代が来るでしょう」と言うと、人によっては「5~10年のうち」と思うかもしれませんし、人によっては「20~30年のうち」と思うかもしれません。
では「近いうちに南海トラフ地震が起こる」と言った場合はどうでしょう?ゲラーさんは「明日」かもしれないし「20~30年後」かもしれないし「100年後」または「1000年後」かもしれないと言います。私も以前に地質学者の方の講演で「近いうちに地震が発生しますという場合、地球誕生から46億年という長い時間軸での近いうちなので、今後1000年くらいのうちにという意味で近いうちと表現する」と聞きました。
それだったら私にも言えます…「近いうちに大地震来ます!」と(笑)
ゲラーさんは予知と予測は違うとした上で「短期的予知は不可能だし、長期的予測も不可能」と指摘しており、それがTwitterで私にコメントしてくださった内容です。
なぜ地震予知にこだわる?
ゲラーさんは言います。「多くの地震学者は予知はできないと分かっていマス。マイクやカメラがないところではみんなそう言ってマス(笑)でも予知はできないと言うと研究予算がもらえない。だから予知はできないとは言えない」と。
1978年に「地震の予知は可能」を前提とした大規模地震対策特別措置法(大震法)が成立しており、毎年100億円規模の予算が投じられてきたそうです。それから1995年の阪神・淡路大震災後には政府機関として地震調査研究推進本部が設立され、2011年の東日本大震災の翌年には年間予算が356億円に達したそうです。
「地震予知のため」と言えば莫大な研究予算が獲得できるから「地震は予知できません」なんて言えないし、間違いだと分かっても予算を使って研究を進めてしまった以上はもう後戻りできない…これが日本の地震研究の構造的問題だとゲラーさんは指摘しています。
「地震ハ予知デキマセ~ン」という理由
ゲラーさんは地震予知の研究をまったく否定するものではないが、そこにかける予算と労力をもっと基礎研究と防災対策にかけるべきだと主張しています。
できもしない予知や予測で作られたハザードマップで、「危険だ」と煽られた地域以外の方は大地震は「他人事」と感じてしまいます。現に火災保険の補償内容にある水災害補償についてお客様に説明していると、必ず出てくるのは「ウチはハザードマップでも色がついていないので大丈夫。保険料もったいないので水災害補償は外してください」と言われます。でもハザードマップで色がついてないところにも水災害は起こるのです。
私は地震の専門家でも地質学の専門家でもありませんから、本当に地震予知が不可能なのかどうかはわかりません。しかし国民の生活を守るために「いまの科学では地震予知はできない」と認め、ハザードマップで特定地域の危険性を煽るのではなく、日本全国どこでも同じ危険性があることを伝えなければいけないというケラーさんの意見に激しく同意します。
「地震はどこでも起きマス。デモどこにに来るかワカリマセン。いつでも、どこでも、不意打ちデス。それが地震デス」とゲラーさんは話しています。
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